なぜ、郵政事業は民営化をはじめだしたのか。いつも物事に疑問を持って、取り組んでおられる方なら一回くらいは疑問を持たれるであろう。私は実は『2001年の参院選で特定局長らによる組織ぐるみの選挙違反事件が摘発された』ことが原因で郵政民営化が始まったものとばかり思っていた。

だが、実際はそうではなくて、『1998年の橋本内閣時代の行政改革で「国でやっていた事業のうち、民間にできるものがあれば民間に任せる。それによって政府をスリム化し、国民負担率を下げよう」』というのが、直接的なものではないが、そもそものことの発端ではあった。ただし、この時点では行政改革法案には『郵政省は国営であって、民営化はしない』ことが明記されており、98年の時点でも郵政民営化の話は出たようだが、話としては成立していない。

しかし、2001年に小泉内閣がスタートしてから、郵政民営化が再燃し、郵政民営化反対派と小泉派に分かれて今も、激闘が繰り返されているというわけである。

ここで気になったのが、「郵政民営化郵政民営化」と声高に言ってはいるが、本当にそれ民営化なの?というところ。

実をいうと、これは完全な民営化ではなく、政府が1/3超の出資を続ける持ち株会社のもとに『郵便』、『貯金』、『保険』、『窓口ネットワーク』という四社に分社するという形をとっている。

当初は「時代の流れにさからうことなく、諸外国に倣って、今まで競争原理の働かなかった郵便事業にも民営化のいいところを取り入れていきましょう」ということだったのが、雇用の確保に走るばかりに郵便局網の再編・整理を実施できないというジレンマを抱えることとなってしまった。

この状況のままでは、『民間ならとっくに再生機構による経営の建て直し』をしなければならないにも関わらず、下手に半官半民なものだから、従業員も公務員資格のままで、しかも世襲。負債の穴埋めは税金がしてしまう始末。

先のローソンでの宅急便取り扱いが、ヤマト運輸(クロネコヤマト)からゆうパックへ扱いが変わったように、力で民間をねじ伏せてこれが民営化などとうそぶいている。昔ほどではないにしろ、自民党の集票マシーンであることには変わりなく、郵便局をむげにできないというのでは何のための民営化だかわかりゃしない。

もちろんわたくしは、郵政民営化に反対するものでは無論ない。競争原理がきちんと機能すればこそ、本当に国民にとって有効なサービスの提供ができると考えるからである。競争が働かないところには厳しさは生まれ得ない。あるのは甘えだけだ。

民営化を本当の民営化にするためにはまずは『にっぽん全国津々浦々まですべてを網羅する郵便ネットワーク』にいいかげん歯止めを利かせる時期がきたということだ。それはいうまでもなく、経営規模を適正なものとしあふれた人員に関しては国が面倒を見るしかない。今、この英断を下すことが出来る否かが焦点となっているのだ。

郵政民営化で始まる 物流大戦争 - 売上高24兆円の超巨大複合企業が動く!

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郵政民営化の虚構―21世紀の新しい郵便局をめざして

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郵政民営化―郵便局はどこへ行く

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「郵政民営化」小泉原案 (小学館文庫)

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