PLO次期議長にマフムード・アッバス氏--「あら!ファック(ト)!」か

次期PLO議長の呼び声も高いアッバス氏が9日に開催されるパレスチナ自治政府議長選に当選すれば、2003年のロードマップ(テロ防止などを示した指針)合意後以来、およそ2年ぶりに交渉再開がされることとなりそうだ。しかし、昨日4日に起きたガザ地区病院付近でのイスラエル軍戦車の発射した砲弾により負傷者発生の事件はロードマップ交渉再開にまたも暗雲を招いた結果となっている。
欧米西側諸国の石油の安定供給のためにアメリカとイギリスにより画策された『1947年イスラエル建国支援』という事実は、ただでさえややこしい中東情勢を尚のこと、ヤヤコシクしてくれている。
米英の介入が「エルサレムユダヤ人のもんですわ」とイギリスをしてバルフォア宣言を言わせしめる結果となってしまう(まぁ、それだけではなく色々とめんどいことがココに五万と絡んでいるのです)。これまで約2000年の間、各地を放浪し差別しつくされてきたユダヤの人々にとっては『ついに「安息の地」を得た』ということになるのだが、アラブ人は『失われた2000年』の間、その地に現地民としてずっとそこに住んでいた人々である。
まさにアラブの人々にあっては「我が故郷」ともなるわけだが、アラブの人たちにとっても約束の地となる祖国をアメリカやイギリスの一方的な思い入れだけで奪われかねない事態へと発展したわけである。(そりゃそーだ、日本人がアメリカやイギリスの勝手な思いつきで「ここはな、そもそもの昔々○○ゆう部族の人たちのもんやってん。せやから、あんたら悪いけど出ていってんか?」と言われたらカチンとくるのと同じことである。そういったわけで、「このボケ、何をいまさら寝ぼけたこと抜かしとるんじゃい。われ、戦争じゃ、戦争!」という結果に陥るわけで。)
で、かつてはイギリスやアメリカによって「独断で」国と認められたパレスチナも結局国家の体裁を取ることはできず、現在も「自治区」という形を取りつづけている。そのパレスチナ人はその「自治区」の中で国家を作ろうとし、イスラエル人は国家再建を阻害しようとする。そのいつ終わるとも知れないメビウスの帯みたいな争いごとを和平により解決しようとして『パレスチナ解放自治区』を設けたわけである。
そして「和平を進められる人物」としてもっとも最適なアッバス氏が就任するその間際にイスラエルの砲弾である。それで、アッバス氏は「(やっと仲直りしようと思ったのに)戦車という武力によって和平を阻害するものは(ユダヤ人とアラブの平和を阻害する)シオニズムを信奉する敵だ」といったのはこういうわけである。少なくとも現在イスラエル領となっているガリラヤ地方のサファドの出身である彼は「ユダヤ人出てけ!こんちくしょー!」と言っているわけではない。
アッバス氏自身、アラファト時代から続く半戦闘状態の国政に嫌気がさした、アラファトに首相を解任させられた、欧米諸国に翻弄されつづける中東情勢には当事者がけりをつけるのが妥当だと思っていたに違いない。それだけに、祖を同じくする仲間に裏切られることは、本当に悔しく、恨めしいことに違いないのである。

パレスチナ新版 (岩波新書)
パレスチナ問題
ユダヤ人―迫害・放浪・建国 (中公新書 (30))